理事長所信

Step forward

 

一般社団法人 瀬戸青年会議所

第72代理事長 山本 祐大

 

【はじめに】

青年会議所は、戦後間もない1951年、「新しい日本の再建は我々青年の仕事である」という理念のもと、日本青年会議所(日本JC)が設立されました。当時の日本は、戦禍から立ち上がり、国のかたちを取り戻そうとする時代にありました。焼け野原の中から未来を切り拓こうと立ち上がった青年たちは、自らの可能性を信じ、行動をもって地域社会の復興に寄与しました。その精神は、今日の私たちにまで脈々と受け継がれています。
 そしてその3年後、1954年に私たち瀬戸青年会議所は全国で61番目のLOMとして誕生しました。以来71年にわたり、瀬戸という地域に根ざし、まちの課題に正面から向き合い、仲間とともに汗を流し、時に悩みながらも挑戦を続けてきた先輩方の活動は今を生きる私たちに大きな誇りと責任を与えています。そして近年では一昨年、10年後あるべき瀬戸のまちを思い描いた提言書を作り、昨年はやきものの体験価値に目を向けた事業を展開してきました。
 今の社会に目を向けますと、特に新型コロナウイルス感染症の流行は社会に大きな変化をもたらしました。リモートワークやオンライン会議が普及し、私たちの生活様式は一変しました。便利さの裏側で、人と人とのつながりが希薄化し、地域活動や祭礼の場が縮小したことにより、まちの絆が弱まった側面も否めません。こうした変化は、新たな課題を突き付けると同時に、今だからこそ地域の絆を取り戻す活動の意義を示しているのではないでしょうか。私たちは目の前にある課題があることを前向きにとらえ、新たな挑戦へと変えていかねばなりません。

【心に瀬戸を灯す】

現在、瀬戸市が直面している大きな課題のひとつは、生産年齢人口の減少と子育て世代の域外流出です。瀬戸市の資料では2045年までに生産年齢人口は今より30%以上減るとの見通しも示されています。働き手の減少は産業基盤の弱体化を招き、地域経済の縮小につながります。さらに子育て世代の流出は、地域に新しい担い手や子どもの声を失わせ、将来の活力を大きく損ないます。このままでは地域社会は徐々に活気を失い、将来の展望が見えにくくなってしまいます。
 この流れを食い止めるために重要なのは、未来を担う子どもたちが瀬戸に誇りを持ち、大人になっても「このまちに関わり続けたい」と思える気持ちを育むことです。つまり、子どもたちが瀬戸を心から大切に思い、成長してからも地域と関わりを持ちたいと願うよ うなシビックプライドの醸成が欠かせません。大人がただ「瀬戸は良いまちだ」と口で伝えるだけではなく、子ども自身が体験を通じて心に刻むことが大切です。
 「せともの」という言葉は、かつては日本全国で陶磁器の代名詞として認められていました。そして瀬戸は1000年以上にわたり、やきものを作り続けてきました。これはただやきもの産業があるというだけではなく、まちの人の営みがこれを中心に形成されており、路地や商店街、窯跡など、まちの随所でその痕跡を感じ取ることができます。この歴史と文化は、日常で意識しなくとも私たちの中に確かに息づいています。こうした普段は意識することの少ない、しかし確かに私たちの中に存在している瀬戸の文化に触れる体験を通じて、単なる歴史の知識ではなく「まちそのものがやきもの文化とともに歩んできた」、そして自分もその一人なのだという実感を得ることができます。
 その体験は、瀬戸を単なる居住の場として見るのではなく、誇りを持って関わり続けたい「特別なまち」として捉えるきっかけになるでしょう。私たちはひとりひとりの中に眠っている瀬戸への愛着を呼び起こし、瀬戸市への見方を新たにする機会をつくりたいと考えています。それがやがて、子どもたちや若い世代が瀬戸にシビックプライドを抱き、未来においても「瀬戸と関わっていたい」と思える基盤につながっていくと信じています。
 私たちは地域文化に思いを馳せる体験を通じて、子どもたちの心に瀬戸への愛着の火を灯していきます。

【所属する価値のある団体へ】

私自身、瀬戸青年会議所での活動を通じて多くの学びを得てきました。事業の企画から運営までを仲間とともに挑戦し、成功も失敗も経験しました。その一つひとつが、私にとってかけがえのない財産となっています。異なる業種や立場の仲間との議論は、自分の視野を大きく広げ、これまで考えもしなかった発想を得るきっかけとなりました。また、地域の団体や行政との協働を通じて、まちづくりの現場に触れ、今までどこか他所事であった地域課題を自分事のように感じるようになりました。その三信条にあるように青年会議所は、まさに「自己成長の場」であり、「社会貢献の場」であり、そして「仲間とつながる場」だと強く思うようになりました。
 私は、青年会議所はメンバーが熱意をもって活動すれば、それに見合った成果を必ず返すだけの懐を持った団体だと信じています。そして、多様なバックグラウンドを持つメンバーが互いを尊重し、共通の目標に向かって一丸となり、学び合い、刺激し合い、挑戦することで組織は必ず成長していくはずです。
 そのためには、まず所属するメンバー自身が青年会議所で何ができるのかを知り、この団体だからこそ挑戦できる事業を考え、積極的に活用していく必要があります。実際に行動することで、新たな気づきや次に挑戦したいことが見えてくるはずです。そして、こうした活動を後押しするためには、効率的な総会や例会の運営、情報伝達の仕組みを整える とともに、仲間同士がつながりやすい雰囲気をつくり出すことが欠かせません。多様な考えを持つ仲間と意見を交わすことは、自らの視野を広げ、成長の大きな糧となります。
 私たちは瀬戸青年会議所が地域社会から信頼される存在であると同時に、メンバー一人ひとりが所属する価値を実感できる組織となるように力を注いでまいります。

【会員拡大につながる意識ブランディング】

瀬戸青年会議所は毎年まちづくりや青少年育成事業を実施しており、その事業単位では多くの市内外の方々の評価を受けています。例えば2023年に実施しました「ランタンフェスinセト」では日本青年会議所の地域社会向上プログラムの最優秀LOM賞をいただいております。
 一方で、瀬戸青年会議所は長らく会員減少という課題に直面してきました。社会の変化や働き方の多様化といった外的要因は確かに存在します。しかし最大の要因は、私たち自身がこの団体に明確なイメージをもち、それに自信と誇りを持って活動しているかどうかにあるのではないでしょうか。瀬戸青年会議所が魅力ある団体であることを自らが示さなければ、次の世代にその魅力が伝わるはずがありません。
 幸いにも近年は、新たな仲間が少しずつ増え、会員数は増加傾向を見せています。この流れを一時的なものに終わらせず、確かなものとするためにはまず所属する私たち自身がその存在意義や魅力について見つめ直し、理解を深めることが重要です。そのうえでより多くの地域の方々に瀬戸青年会議所の魅力を正面から伝えていくことが必要です。
 瀬戸青年会議所は創立以来71年間にわたり、地域社会の発展のために事業を行ってきました。この先輩方から引き継いだ運動に誇りをもって、私たち一人ひとりが魅力を伝えることで同じ志をもった仲間を増やしていきましょう。

【持続可能な運営体制】

組織が長期的に発展し続けるためには、その時々に即した柔軟な運営体制を構築することが欠かせません。社会は常に変化を続けています。テクノロジーの発展や生活様式の変化といった要素によって今までよしとされてきた過去のやり方は必ずしも最適とは言えなくなっていきます。また社会だけでなく自分たちの置かれている立場も絶えず変化しています。そのため私たちは常に必要なものを見極め、新しい運営方法を取り入れる挑戦を続けなければなりません。
 そのためには、まずテクノロジーを活用し、省力化と情報共有の徹底を図ることが欠かせません。さらに、限られた人員であっても役割を分担し、互いを補い合うことで、規模に左右されない確かな運営を実現することができます。
 持続可能な運営体制とは、単に組織が存続することを意味するのではありません。変化 に対応しながらも、一人ひとりがやりがいを持ち、学びを得ながら活動を継続できる環境を整えることです。私たちは、過去の伝統を大切にしつつ、新しい取り組みにも積極的に挑戦し、次の世代へと自信を持って引き継げる組織を築いていかなければなりません。

【むすびに】

社会課題も組織課題も、待っていては誰かが解決してくれるものではありません。私たち一人ひとりが主体者意識をもって一歩踏み出すことが、解決への道を切り拓きます。
 私はこの所信に込めた思いを「Step Forward」という言葉で表しました。それは単に前へ進むという意味ではなく、「まずは一歩を踏み出そう」という決意の表現です。これはなにかと停滞しがちな自分自身を奮い立たせる言葉であり、そして何より、ともに歩む仲間へのメッセージでもあります。現状維持に甘んじることなく、たとえ小さくても次の一歩を踏み出していきましょう。失敗を恐れる必要はありません。挑戦の中で得られる学びこそが、私たちを成長させ、次の挑戦へとつながっていきます。そして、その一歩一歩の積み重ねが、やがて大きな変化となり、地域を動かす力となります。
 瀬戸青年会議所が地域社会にとってかけがえのない存在であり続けられるように、そして私自身も仲間とともに成長を重ね続けられるように、理事長として全力を尽くす決意です。
 本年度1年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

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